仕事のひとつとして、某所で介護向け冷凍食品の販促に、少しかかわっています。主にマルハニチロ食品が売り出している、「やさしい素材」シリーズの冷凍食品の販促なのですが、関わっていると食べたくなってくるものです。販促ツールをデザインする以上、やはり実際に食べてみないと、商品の魅力はよくわかりません。
というわけで、メーカーさんから関係者向けの試食用として、いくつか材料をいただいて実際に調理してみることにしました。
介護向け食材の調理結果はこれ
さて、マルハニチロ食品が出している素材のうち、今回は
- New素材deソフト「ノルウェーさば」→ さばの味噌煮
- やさしい素材「トマト」→ そのままサラダに
- やさしい素材「温野菜ごぼう」→ きんぴら煮
の3種類を調理しました。なお、彩りや栄養バランスを考えて、普通の野菜を2点(すじなしインゲン・ぶなしめじ)を追加しています。
調理時間は全行程で27分でしたが、慣れると15分におさまると思います。調理に要したのは、コンロ×2口、手鍋と小さなフライパンが各1です。洗い物も最小限で済みますね。
冷食技術の思わぬ進化に驚く
驚いたのは、サバの切り身「new素材deソフト」です。従来の介護向け食材は、すり身をゲル状にかためたものが多く有りました。しかし、このサバは、しっかりと「切り身の形」をしています。どこからどう見ても、普通のサバの切り身です。
切り身と同じ…というより、切り身そのものです。実際に箸で食べてみようとしても、すり身では無く、魚の素材がそのままの形を保っていることが見て分かります。
実際に食べてみると、歯で噛まずとも、歯茎や舌の圧力で簡単に潰れます。本当に「介護向けの触感」です。これなら、要介護老人や怪我人であっても、アゴを強く動かす事無く、食事が可能でしょう。
「介護向け食材は、ドロドロしたすり身のカタマリばかり」というこれまでの常識が、軽く吹き飛んでしまいました。
減圧法+酵素浸透による、冷凍技術のブレイクスルー
この素材は、ここ1年くらいで実用化された冷凍技術「減圧法」によるものです。食材(この場合はサバ)をチャンバーに入れ、気圧を下げる(減圧する)と、食品にふくまれる水分が蒸発してしまいます。そこに、細胞を繋ぐ細胞壁などを溶解させる、ある種の酵素を水の代わりに浸透させています(下図)。
酵素が、細胞と細胞を繋ぐ組織を溶かし、素材の感触が柔らかくなる、というものです。
これにより、素材の形を保ったまま、介護用の柔らかさを実現することができるようになりました。
実際、上にある写真を見ていただければわかるとおり「ゴボウ」は数分間火を通しただけで、すこし形が崩れています。しかし、サバは10分以上も火を通しましたが、まったく型崩れしていません。
*ゴボウは煮るのではなく、解凍してから味付け用の汁をかけるだけで、よかったようです。
日本の冷凍技術が新次元すぎる
これは、日本初の技術として、なかなかの優れものだと思います。
歳をとったらスプーンで半練り食品ばかり、というのは、老人にとって要介護になりたくないという動機のひとつでしょう。しかし、食べ慣れた「箸による、普通の食事」がこの冷凍技術で普及するならば、少しは雰囲気も変わってくるのはないでしょうか。
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