光学的な話は後回しにして、まずはデジタルカメラを赤外線写真用に改造してみましょう。今回は、パナソニックのデジタルカメラ DMC-FX35 を実例にします。

材料と工具
用意する材料は以下の通りです。
- デジタルカメラ DMC-FX35 パナソニック (中古:1,980円/カメラのキタムラ)
- SC70 写真撮影用フィルター 富士フイルム(990円/ビックカメラ)
- PET樹脂板 0.5mm アクリルサンデー(336円/東急ハンズ)
工具としては以下を準備します
- No. 0.00 プラスドライバー(105円/ダイソー)
- カッターナイフ (一般的なもの)
- 平ヤスリ(105円/ダイソー)ダイヤモンド粉を貼り付けたものが使いやすいです。
SC70フィルタについては、お好みで別のものにしてもよいと思います。個人的には、偽色と赤外効果を両方楽しみたいのであれば、SC66 〜 SC72 あたりが良いのではないかと思います。もちろん、IR78よりも上の型番のフィルタを選ぶと、本格的な赤外効果が表現された、昔ながらの印象的な赤外線写真になります。
今回はピント補正用に0.5mmのPET樹脂板を使いましたが、0.3〜0.35mmのほうが良いかもしれません。
カメラを分解する
DMC-FX35は、前面と背面のカバーを、側面のカバーとネジで固定しています。取り外すのは背面だけで良いのですが、そのために背面と側面のカバーを外します。
底面に2つ、左右の側面に3つのネジがあるので、全て外します。すると、(背面から見て)下から左側面を覆っているカバーと、右下の小さなカバーが外れます。
この時点で、5つのネジを外しましたが、このうちL字型の金具を固定していた側面のネジ×1本だけが2mmの長さで、他の3mmよりも短いので覚えておいて下さい。
背面のカバーを外します
背面のカバをゆっくりと外します。液晶モニタの信号と給電をおこなうフレキケーブルを傷つけないように、慎重に作業して下さい。

液晶モニタは、2つのフレキケーブルで基板に接続されています
液晶モニタと基板をつなぐ2本のフレキケーブルを、基板から外します。このフレキケーブルと基板を繋ぐコネクタの使い方は、カメラ分解において必須の知識なので、図解します。
フレキケーブルを固定するコネクタの操作
下の図は省略図で、たとえば電極などは描いておりません。しかし、フレキケーブルと基板を繋ぐコネクタの構造を理解するのには充分だと思います。
DMC-FX35 の液晶モニタに信号や電力を送るフレキケーブルは、2種類のコネクタで固定されています。

横から見た図:フレキケーブルと基板の接続は、この図のように外します
まず、1番目のコネクタ(幅広のケーブル)は上図のように外します。固定レバーを操作する場合は、先が固くないもので操作して下さい。基板やコネクタを傷つけないようにするためです。

横から見た図:フレキケーブルと基板の接続は、この図のように外します
2番目のコネクタは、レバーの位置が逆になっていますが、こちらも跳ね上げることでケーブルを外すことができます。
外したケーブルを再び固定する際には、図と逆の操作、つまりケーブルを差し込んでからレバーを降ろします。
撮影素子まで剥き出しにする
液晶モニタと基板を隔てる金属製のカバーを外します。ネジは4本ですが、いちばん右のネジだけ色も長さも違います。覚えておきましょう。

内部カバーは2種類のネジ4本で固定されています。
カバーをはずしたら、CCDの基板が表れます。これもネジを3本外し、金属の台座をピンセットやラジオペンチで、ゆっくりと慎重に持ち上げます。

CCDを固定した基板は、1種類のネジ3本で固定されています
するとローパスフィルタが、ゴム製のブラケットでCCDに取り付けられた状態で一緒に持ち上がってきます。これを指で外してしまいます。写真では見づらいですが、指でもっている透明のガラス板が、ローパスフィルタです。

このローパスフィルタは、ゴム製のブラケットでCCD素子に固定されています。手で触ると簡単に外れます
赤外フィルタとピント調整用のPET樹脂版を組み込み
可視光をカットする SCフィルタ(またはIRフィルタ)を、CCDとレンズの間に入れます。この場合外したローパスフィルタより縦横1mmくらい大きめにカットしたほうが、あとでずれたりしにくいようです。

外したローパスフィルタの代わりに、赤外撮影用フィルタと、透明板を組み込みます
そして、ローパスフィルターと同じサイズに切り出した透明PET樹脂板を、さきほど入れた可視光カットフィルタの上に入れます。この透明PET樹脂板は、ピント調整のためにいれます。PET樹脂の表面は爪などでも容易にキズがつくので、慎重に作業して下さい。
ピント調整用のPET樹脂坂は、ローパスフィルタよりは若干(0.2〜0.3mmくらい?)小さくしたほうが収まりが良いようです。ヤスリで周囲を削って、調整しましょう。
樹脂坂をいれたら、その上からゴム製ブラケットを入れ直し、CCDの基板を戻します
あとは、これまでの分解の手順を逆にして、カバーを元に戻し、作業は終了です。
cool
センサーに赤外線シートを貼らず、そのまま元どおりに組み立て、レンズに赤外線透過フィルターを付けるのでもいけますか?
試した事はありませんが、理論的にはそれでも撮影可能だと思います。
私も非常に興味があり拝見させて頂いていますが、無知ゆえに理解し難い点
をお伺いしますのでお教えください。
新しくフイルターをセットする順序です。
要はカメラレンズ・IRフイルム+ピント調整(PET板)+保護ゴム+CCD
この順序よろしいですか?
はい、その順序で良いです。私もそのようにしております。
有難うございました。
先日から、キャノンIXY 10Sを始めて分解して赤外線フイルムを
なんとか装着完了し組み立て、どのような風景が見られるのか
電池を入れて・・・・?スイッチが入らず・・・失敗でした。
残念。
それは残念でしたね……。IXYのシリーズは少し中身がいじりにくいので、パナソニックの FX30以降の機種で挑戦されてはいかがでしょう。