ローパスフィルタとは、デジタルカメラの撮影素子(CCDやCMOS)の前に取り付けられていて、ある波長の光を遮断したり、光の方向を曲げるなどしている部品です。ある値よりも低い(ロー)周波数の光を通す(パス)ので、ローパスフィルタというわけです。
“ローパスフィルタ”の名前と役割

カシオQV-R40のCCDとローパスフィルタ
通常のデジタルカメラでは、写真画質を低下させる紫外線・赤外線を遮断するために、これが取り付けられています。
可視光や赤外線は、紫外線(およそ380nm)より長い波長の光です。光の波長が長いと「周波数が低い」ということになるので、このローパスフィルタは名前のままでは、紫外線をカットするためのもの、ということになります。
しかし、デジタルカメラの画質を低下させるのは紫外線だけではなく、赤外線など様々です。
可視光を通し、赤外線を遮断するフィルタは、本来ならハイパスフィルタと呼称しても良いと思いますが、デジタルカメラではどういうわけか全部まとめて「ローパスフィルタ」と呼ばれています。
赤外線写真のデジカメ改造では、このローパスフィルタを取り除きます。それで、カメラをいくつも改造していると、カメラの年代が新しくなるにつれて、厚みがどんどん薄くなっているのに気づいたわけです。
オリンパス C-2040 は 2.74mm
下の写真は、オリンパスのデジタルカメラ「CAMEDIA C-2040」から取り出したローパスフィルタです。厚さは2.74mmです。また、肉眼でも4層構造になっているのがわかります。

厚さは2.74mmで、4層構造が見えます
おそらく、それぞれの層で紫外線を遮断したり赤外線を遮断したり、モアレを散らしたりしているのでしょう。
このカメラは2001年に購入したのを覚えています。それ以後、デジカメに組み込まれるフィルタは、薄くなっていきます。
発売年 | メーカー名・機種名 | フィルタの厚さ |
---|---|---|
2001年 | オリンパス CAMEDIA C-2040 | 2.74mm |
2003年 | カシオ QV-R40 | 1.32mm |
2005年 | リコー Caplio GX8 | 0.98mm |
2006年 | キヤノン PowerShot A530 | 0.30mm |
2006年 | キヤノン IXY DIGITAL 800 IS | 0.28mm |
2007年 | ペンタックス Optio E30 | 0.54mm |
2007年 | パナソニック DMC-FX30 | 0.30mm |
2008年 | ニコン COOLPIX S600 | 0.23mm |
2008年 | パナソニック DMC-FX35 | 0.17mm |
*器差 0.01mm のデジタルノギスで測定(←注:安物です)
2006年のキヤノン製が翌年のペンタックスよりも薄くなっていますが、おおむね、登場年が下るにつれて薄型化しているのがわかります。この薄型化は、デジタルカメラの小型化を追うかのように進行しています。
デジカメの小型化は、こんなところにも表れているのだな、と思わせます。
とんでもない誤解です。
デジカメにおけるローパスフィルタとは 光の波長に対するものではなく 二次元の空間分解能に対するものです。
具体的には ピクセル分解能よりも細かい画像が入ると モアレ や 偽色などを引き起こすため ピクセル分解能以下をカットするためのものです。