赤外線写真の為にカメラを改造して、2年近くが経ちます。しかし、最近は撮影した赤外線写真が、なんとなく「褪せた」 と感じるようになりました。具体的にあげると、以下のようになります。
- 空が暗くなる「夜景効果」が薄くなり、空が明るく映るようになってきた
- 「スノー効果」により白く・明るく写っていた樹木の葉が、少しくすんで写るようになっきた
これは、赤外線透過フィルターで遮断しているはずの光線(可視光)が、若干ですが通り抜けているのでは、と考えられます。

富士フイルムの赤外線撮影用のフィルターは、どのくらいの間、光線に耐えるのか
ゼラチンフィルター(富士フイルム製はゼラチンではありませんが)の類は、1度封を切ってしまうと、経年劣化・紫外線や光・温度変化が染料に与える影響により、徐々に色あせる性質があります。
当然、交換する必要があるのですが、どれくらい使ったら交換するべきなのでしょうか? ──今回はそれについて考えてみましょう。

各フィルタの耐光性
では、私が愛用する SC70、SC66、IR70、SC60 の耐光性はどのくらいあるのでしょうか。
富士フイルムに問い合わせたら、公開しているPDF資料(ハンドブック)を教えて貰きました。
それによると、赤外撮影に使うフィルター群は以下のようになります。なお、このテストは、「薄曇りの天気」を想定した環境で、光を照射し続けた実験の結果です。
製品型番 | 変退色まで時間 |
---|---|
SC60 | 10時間で変退色を認めず |
SC64 | 2時間で変退色を認めず |
SC66 | 5時間で変退色を認めず |
SC70 | 5時間で変退色を認めず |
IR78 | 10時間で変退色を認めず |
結果は「◌時間で変色を認めず」と書かれていますが、これ以上の使用では色を保証しない、ということでもあります。これを、当ブログでは「性能保証上限」と呼びましょう。
実際、赤外撮影以外のフィルタでは、2時間で変退色する製品もあります。
製品型番 | 変退色までの時間 |
---|---|
BPB-42 | 2時間で若干の変退色を認める |
上の製品は赤外線写真とは関係ありませんが、富士フイルムの撮影用フィルターの変退色性能が、数ヶ月の連続使用を前提としていないのは、おわかり頂けると思います。
このブログで推薦しているように、赤外線フィルタをカメラに内蔵して撮影している場合は、1回の撮影でフィルタが光に晒されるのは、だいたい数分かもしれませんが、それでも、写真を何百枚も取っていると、先述した「変退色まで耐える」時間に到達してしまいます。
- 電源を入れるとレンズカバーが開く(フィルタが光にさらされ始める)
- 構図や設定を決め、シャッターを押す
- 撮影した写真を確認して、電源を切る(ここでフィルムに光が届かなくなる)
この3つのプロセスを、平均して2〜3分はかけていると思います。すると、100〜150枚程度で、フィルタの性能保証上限の5時間に達してしまいます。
ましてや、1〜2年以上も同じフィルタを使い続けると、経年劣化にともなう変退色も起こりえると考えてよいでしょう。
フィルタを新しいものに交換すると、赤外線写真の効果が戻ってきた
しかたがないので、ビックカメラで新品のフィルタを買い求めて、カメラに組み込んでいた昔のフィルタと交換しました。
すると、空の夜景効果が目に見えるほどに改善されました。
このことから、富士フイルムの撮影用フィルターを、カメラに内蔵して赤外線写真を撮っている方は、9ヶ月〜1年に1回くらいはフィルターを新品に交換した方が良いのではないでしょうか。
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